1. 小学校と中学校の成績・テストの違い
まず、小学校と中学校の違いを、主にテストと成績(=通知表の付け方)からご説明します。
小学校のテストは、直前に学習した単元の理解度・定着度を確認するものです。普段の授業の中で取り組むことが多く、テストと普段の授業は大きな違いがありません。直前にやった内容のみが出て、難易度もそこまで高く設定されていないので、平均点は85点くらいといわれています。
中学校のテストは違います。「定期試験」と名前が付き、試験の期間が決まっています。3学期制の場合は、①1学期中間、②1学期期末、③2学期中間、④2学期期末、⑤学年末の5回実施する学校が一般的です。テストの回数が少ない分、出題範囲が広く、1.5~2ヶ月の間に学習したことすべてが出題対象となります。学習内容自体が難しくなっているだけではなく、しばらく前に学習した内容を覚えていないといけない点が大きく違っているのです。結果的に、平均点は60点程度になることが多く、小学校のテストに比べると難しくなっています。中学校の定期試験でいい点を取るには、テスト範囲を定着させるための反復学習が大切になります。
次に成績の付け方です。
小学校は、3段階で評価され、数字ではなく、「よくできる」「できる」「もう少し」といった表現になっています。評価の付け方は、他の生徒と比べるのではなく、先生の決めた基準に従って付けられます。同じクラスでほとんどの生徒が「よい」をもらう科目も出てきます。
中学校になると、5段階の数字で評価されるようになります。評価の仕組みは、小学校と同じように、先生の決めた基準に従って付けられます。テストの点数や普段の授業態度、提出物の状況などを総合して成績が付けられています。ただし、中学校の成績は高校受験の結果に響くため、先生の中には、ほとんどの生徒が「5」をもらうようなことが起きないよう、成績の付け方を調整をする人もいると言われています。
2. 中学校の成績の見方 〜「3」は安心??〜
「3」を取れていれば、とりあえず安心と思っていないでしょうか?
上のグラフは実際に町田市が公表しているデータを元に作成したものです。
町田市の全中学校の5教科(国語・英語・数学・理科・社会)の成績データを元に、「1」〜「5」をもらった生徒が何%いるかということを示しています。
右から見ると、「5」を取る生徒は10%強、「4」は20%強、**「3」はなんと50%**にもなります。一方で、「2」は10%強、「1」は数%と少なくなっています。成績で「3」をもらっていても、実はクラスで成績下位20%に入っている可能性すらあるのです。
大学進学実績のある公立高校に入るには「オール3」+「4」を取る科目がいくつかほしいところです。「3」で安心せず「4」をとる、クラスでトップ30%(40名クラスで上位12名)を目指すことが大切になります。
なお、この成績の分布は、学校や科目によっても大きく異なるため、上のグラフはあくまで参考としてご覧ください。
3. 中学校の成績の付け方
では、中学校の成績はどうやってつくのでしょうか。
通知表を見ると、「1」〜「5」までの数字評価以外に「観点」というものが記載されています。
「知識・技能」がペーパーテスト(定期テストや小テスト)の成果、「思考・判断・表現」がペーパーテストと授業態度・提出物の両方、「主体的に学習に取り組む態度」が授業態度・提出物の評価を指していると考えるとわかりやすいと思います。提出物は、期限内に出すことが大切です。提出期限をすぎてしまうと、全く評価されないこともあります。テストで点数を取る自信のある生徒の中には、提出物で気を抜いてしまう生徒もいるので、お気をつけください。
なお、この成績評価の観点は2021年度に新しいものに変更されています。これまでの観点評価の考えを元に、当社の見解を書いていますが、新しい観点を学校がどう運用していくかは不透明な点があるので、ご注意ください。
4. 高校受験の仕組み(都立高校・私立高校)
では、この中学校の成績がどのように高校受験に関わってくるのでしょうか?
それをご理解いただくために、東京都内在住で都立高校受験を目指す方向けに、都立高校入試の仕組みを中心に説明したいと思います。
都立高校は、3つの入り方があります。
推薦選抜は、「学校の成績(調査書)+集団討論と個人面接+作文または小論文」 で合否が決まります。学力試験はありません。「学校の成績(調査書)+集団討論と個人面接+作文または小論文」を点数化して、点数の高い人から順に合格が決まります。
次に、「学校の成績(調査書)+学力試験」で合否が決まる一般入試があります。一般入試は、前期と後期がありますが、後期は実施しない高校もある上、募集人数も少ないため注意が必要です。学力試験は都立高校であれば、一部の自作校と呼ばれるトップ高校を除き同じ問題が使われます。一般入試の仕組みは、この後、詳しく説明します。
私立高校も同様に推薦入試(主に学校の成績と面接のみ)と一般入試(主に学力試験の成績のみ)があります。注意が必要なのは、推薦入試にも2種類あり、合格したらその高校進学することを約束する専願と、都立高校入試も挑戦できる併願があることです。専願で合格をもらったのに、その高校に進学しないようなことがあると推薦してくれた中学校に大きな迷惑を掛けることになってしまいます。学力試験は各学校が独自に用意するため、難易度や出題される内容が異なることに注意が必要です。
5. 都立高校受験で学校の成績がどう使われるか
では、都立高校の一般入試の仕組みをさらに詳しく見てみましょう。
一般入試は、「学校の成績(調査書)+学力試験」を合わせて1,000点満点の中で、点数の高い人から順に合格が決まる仕組みです。
1,000点の内訳は、学校の成績が300点分、学力試験が700点分となっています。
学校の成績を300点に換算する仕組みは、ちょっとややこしいので注意が必要です。
まず、学校の成績の中で、副教科と呼ばれる4教科(音楽・美術・保険体育・技術家庭)は、成績を2倍して計算します(例えば、音楽が4なら4×2で8になる)。5教科(国語・英語・数学・理科・社会)はそのまま計算します。
そうすると、学校の成績は65点満点となります。
- 5教科(国・数・英・理・社)× 5段階評定 × 1 = 25
- 4教科(音・美・保体・技家)× 5段階評定 × 2 = 40
この数値を300点満点に換算するために約4.6倍したものが、都立高校の一般入試で使われる学校の成績です。
学力試験はもう少しシンプルです。5教科(国語・英語・数学・理科・社会)が各100点満点のテストなので、当日の点数を1.4倍し、700点満点換算にします。
そして、この合計点で上から順に合格する人が決まるという仕組みになっています。
このようにして見ると、高校進学観点では、5教科(国語・英語・数学・理科・社会)はどの教科も等しく大切ということがわかります(1,000点満点中、5教科は各科目163点)。
6. 都立高校受験の学力試験はどんなものか
都立の学力試験は、そこまで難しい問題が出るものではありません。中学校で習った範囲から出題しないといけないため、一部の私立高校が出題するような問題はそもそも出題できないのです。
では、何で差がつくかというと、5教科の中学の学習範囲を漏れなくカバーしているかどうかなのです。3年間で習ったことが幅広く問われますので、付け焼き刃の学習では間に合いません。前述の通り、5教科が等しく重要ですし、継続的な積み上げが大切になります。ただし、難易度は高くないため、地道に努力すれば、公立トップ高校に合格する水準の点数を取ることは現実的な選択肢と言えます。
7. 都立高校受験までのスケジュール
最後に、高校受験までのスケジュールを確認します。
- 都立高校の推薦入試は、1月中旬に出願、1月下旬に試験、2月頭に合格発表
- 都立高校の一般入試は、1月下旬〜2月頭に出願、2月21日頃に試験、3月頭に合格発表
どの高校を受験するかを最終的に決めるのは出願のタイミングになります。 決める材料は、「①学校の成績」と「②学力試験で何点くらい取れそうかという見込み」 です。
①学校の成績は、中学3年生の2学期の成績を指します。中学3年生は2学期の終業式よりも前に、11月末ごろに成績見込み(「仮内申」と呼ばれます)を、担任の先生から教えてもらうことが一般的です。
②学力試験で何点くらい取れそうかという見込みは、外部模試(東京都内では、「Vもぎ」や「Wもぎ」が一般的です)の成績を元に考えます。勉強を始めたタイミングやそれまでの伸び方によって、実際の学力試験で何点くらいが取れそうかを考えることになるので、多くの生徒を見ている高校受験のプロの意見を聞く価値が高い要素になります。
中学1年生・2年生の頃は、学校説明会や文化祭に参加し、近隣で通いたい高校のイメージを持っておくといいでしょう。その上で、中学3年生から、具体的な志望校を固め、最後は、「①学校の成績」と「②学力試験で何点くらい取れそうかという見込み」を元に志望校を決め、高校受験を行うことになります。
終わりに
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。都立高校受験と中学校の成績の仕組みについてご理解いただく一助になれば幸いです。
都立高校入試の仕組みをご理解いただいた後は、目標となる高校を探しながら、合格に向けて、学習を進めていくことになります。試験の科目や範囲が増える中学生活は、時間管理・学習の習慣化がとても大切です。それだけでなく、部活動や習いごと、友達と過ごす時間も、同じように大切なものです。
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