2021年度/令和3年度の都立高校入試(前期)が2/21(日)に迫ってきています。
過去問に取り組んでいるよ!という方も多いかと思います。
ところで、「解く順番」や「時間配分」を意識して解く練習をしていますでしょうか??
「そんなの気にせず前から順番にやればいいんじゃないの?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし生徒たちを見ていると、解く順番と時間配分を工夫するだけで、7点〜10点上がることも少なくありません。
この記事では、国語について、問題を解く順番と時間配分を解説していきたいと思います。
(ちなみにかなり長いです笑。結論は「まとめ」にあります。なぜそうなのか?が気になる人は続きも読んでみてください!)
まとめ
- 国語は正答率がばらつき、簡単な問題と難しい問題の判別がなかなか出来ない科目。
- そのため 「まず全問解く」を最優先に 。
- 順番と時間配分
- ①【順番】大問4の前に大問5を先にやる
- ②【順番】大問4はまず作文の問題を見る
- ③【時間】大問1、大問2(漢字)は「1分」ずつ
- ④【時間】大問3、大問5、大問4の読解問題は「13-13-15分」
- ⑤【時間】作文は「5分」
(→都立入試【英語】の時間配分と要注意問題5選にについてはこちらの記事へ!)
都立高校入試の国語ってどんな問題?
試験時間は50分です。
実際の過去問は、東京都教育委員会のホームページからダウンロードができます。
→都立高等学校入学者選抜 学力検査問題及び正答表等
国語はどれが「難しい問題(=捨てる問題)」かが見抜きにくい
国語は、どれが簡単な問題で優先して正解を狙うべきか・時間をかけるべきかが、とても見抜きにくくなっています。
2020年度や2019年度のように 「最後に簡単な問題があった」 といったこともあります。
そのため、「まず全問解く」を最優先に考えたいのです。
下のグラフを見てみてください。
(都立高等学校入学者選抜 学力検査正答表(東京都教育委員会)2020年度〜2016年度をもとに作成)
数学は、例年どの問題が難しいのかが、ある程度決まっています。
しかし、国語はその傾向がほぼ見られません。
さらに、国語はどの問題が簡単かが年によって変わっています。
例えば大問3の問1は、2016年までは正答率が85%を超えていましたが、2017年から50%程度まで下がっています。
もともと受験生100人のうち80人以上が正解する難易度だったが、直近だと半分程度しか正解しない難易度になった、ということになります。
逆に大問4の問1は、2017年度は正答率が50%程度でしたが、2020年には80%以上まで上がっています。
このように、 どの問題が簡単かなかなか読めないのが都立高校入試の国語 です。
だから全問取り組みたいのです。
文章と選択肢の文字量が長く、時間切れになりやすい
しかし、国語は文章が3つあり、また選択式の問題が多いのですが、選択肢の文字量もなかなかの量。
その結果、時間切れになりやすい。
後の方の問題を時間をかけられず、でもそれが実は簡単な問題で、「あと少し時間があれば正解できた、、、」ということが起きてしまいやすいのです。
たとえば、以下は「1問の選択肢」です。なかなかの文字量ですよね。
(出典:2020年度都立高等学校入学者選抜 学力検査問題(国語))
作文も時間をかけすぎがち
また、都立入試の国語には200字作文があります。
国語の授業でこの文章を読んだ後、「理想の組織」というテーマで自分の意見を発表することになった。このときにあなたが話す言葉を具体的な体験や見聞も含めて二百字以内で書け。なお、書き出しや改行の際の空欄、、や。 や「などもそれぞれ字数に数えよ。
(出典:2020年度都立高等学校入学者選抜 学力検査問題(国語))
作文のテーマは社会性のあるものになっており、大人でもなかなかパッとは書けないものばかり。
また、作文は明確に「答えはこれだ!」と決まらず、時間をかけようと思えばどこまでもかけられてしまいます。
これも、時間切れになりやすい要因です。
じゃあどうすればいいか?
「取り組む順番」と「時間配分」を工夫することで、時間切れを防ぎやすくなってきます。
表にすると以下のようになります。
重要なポイントは5つ。
①【順番】大問4の前に大問5を先にやる
②【順番】大問4はまず作文の問題を見る
③【時間】大問1、大問2(漢字)は「1分」ずつ
④【時間】大問3、大問5、大問4の読解問題は「13-13-15分」
⑤【時間】作文は「5分」
順を追って説明していきます。
ポイント①:【順番】大問4の前に大問5を先にやる
国語は、大問4よりも先に大問5を解きましょう!
理由としては、以下の3点が挙げられます。
- 大問4よりも大問5の方が読みやすいため。
- 大問5には簡単な問題がひそんでいることが多いため。
- 大問4の作文に時間をかけすぎる危険があるため。
大問4よりも大問5の方が読みやすい
大問4は「説論文」と呼ばれ、歴史や人類学など、学術的な書物が出典として選ばれています。
文章の内容や出てくる言葉が難しいこともあり、時間をかけすぎてしまいがちです。
一方で大問5の「古文鑑賞文」は、古文・漢文そのものではありません。
それらについて話している現代文の対話文です。
苦手意識を持っている受験生も多いですが、対話文の部分について聞かれており、古文ではなく現代の会話文が理解出来れば解けるような問題もあります。
大問5には簡単な問題がひそんでいることが多い
また、大問5には「これはサービス問題かな?」と思われるような、本文の文章を全く読んでいなくても解けるような問題がひそんでいることが多いです。
たとえば2020年度大問5の問5。
Bの中のーを付けたア〜エのうち、現代仮名遣いで書いた場合と異なる書き表し方を含んでいるものを一つ選び、記号で答えよ。
「つづき」「よし」「たとひ」「あり」の中で、今は日常的には使われていないものはどれか?という問題です。
(出典:2020年度都立高等学校入学者選抜 学力検査問題(国語)より抜粋)
答えは、今では日常的には使わない、「ウ『たとひ』」です。
「現代仮名遣いではないものを選ぶ」という、文章を読まなくても点が取れるような問題でした。
大問4と大問5の平均正答率はそんなに変わらない
実は過去6年間の正答率を比較すると、作文を除く大問4の平均正答率と大問5の平均正答率はほとんど変わりません。
直近3年間(2018・2019・2020年度)の正答率でいえば、1.6%しか変わりませんでした。
2018年度では大問5の方が正答率高かった ぐらいです(大問4:58.5%、大問5:60.2%)。
だから 大問5は最後の大問だからといって難しいわけではない のです。
大問4の作文に時間をかけすぎる危険がある
そして、大問4の最後の問題は200字の作文。
国語の授業でこの文章を読んだ後、「理想の組織」というテーマで自分の意見を発表することになった。このときにあなたが話す言葉を具体的な体験や見聞も含めて二百字以内で書け。なお、書き出しや改行の際の空欄、、や。 や「などもそれぞれ字数に数えよ。
(出典:2020年度都立高等学校入学者選抜 学力検査問題(国語))
後述しますが、作文の目安時間は5分です。
大問3・4・5は1問につき1分〜2分。
仮に作文に10分(5分オーバー)かけてしまうと、大問5の問題が3問解けないまま終わってしまいかねません。
「大問5を捨てても、作文を頑張れば点数が取れるでしょ!」
と思うかもしれませんが、作文の配点は満点でも10点。
一方で大問5は各5点なので、3問だけでも15点。
A. 完璧な作文で10点 + 大問5が時間切れ = 合計10点
B. そこそこの作文で6点 + 大問5を1問正解5点 = 合計11点
そこそこの作文であるBの方が得点が高くなるのです。
だから大問4よりも先に大問5に取り組み、作文を試験の最後に回す。
そうすることで、読解の問題を全て解き終えてから心に余裕を持って作文に取り組むことができると同時に、時間のかけすぎを防ぐのです。
ポイント②:【順番】大問4はまず作文の問題を見る
大問4を解く際には、 問5(作文)の問題文を先に読んで確認 します。(解くのは最後です。)
「なぜ作文の問題文を?」 と思うかもしれませんが、この小さなコツだけで大問4の理解が大分楽になります。
というのも、
作文のテーマになっているものが、大問4の文章の主題を表しているから
です。
(主題とは「何について話しているか」「言いたいことは何か」といったことです。)
作文の「テーマ」が、文章の「主題」を表す
例として、2020年度学力検査の大問4の文章(福山伸一著『動的平衡3』からの抜粋)を見てみます。
文章の最初の文は以下の通りです。
「宇宙の大原則に『エントロピー増大の法則』がある。エントロピーとは乱雑さのことであり、この世界のすべてのものごとは、時間の経過ととも にエントロピーが増大する方向に進む。」
これだけ読むと、 「なんだこれは…?」 と戸惑ってしまいますよね。
この後も 「エントロピーってなんなんだ…」 と困惑したまま読み進めかねません。
一方で、問5(作文)の問題を見ると、
国語の授業でこの文章を読んだ後、 「理想の組織」というテーマで 自分の意見を発表することになった。このときにあなたが話す言葉を具体的な体験や見聞も含めて二百字以内で書け。なお、書き出しや改行の際の空欄、、や。 や「などもそれぞれ字数に数えよ。
とあり、「この文章は『理想の組織』についてなのか!」と理解することができます。
もっと言えば、「エントロピー」なんて言葉は無視してもいい。
このように 事前に作文のテーマを確認することで 、難しい言葉に惑わされず、何の話なのかをつかみながら読みやすくなります。 結果として、問題にも答えやすくなります。
作文を考えるときに、文章の読み返しが少なくなる
また、問5(作文)を見た上で文章を読み始めることで、作文で何を書くのかを意識しながら文章を読むことができます。
その結果、 作文を書く際に読み返す量が少なくてすみ、スムーズに書き出せる ようになってきます。
作文のコツについては後でもお話しますが、基本的な型としては、
- 1段落目:作者の考え+自分の意見と理由
- 2段落目:自分の体験+まとめ
の2段落構成です。
作文では、作者の考えをまとめ、それに沿って自分の意見や体験を述べる必要があります。
例えば、2020年度学力検査の大問4であれば、問5に「理想の組織」というテーマとあるので、
- 作者の思う「理想の組織」は何だろう?
- 自分は作者の意見に賛成か、反対か?
という点を意識しながら文章を読んでおけば、スムーズに作文の1段落目を書き始めることができます。
ポイント③:【時間】大問1、大問2(漢字)は「1分」ずつ
大問1(漢字の読み)、大問2(漢字の書き)は、それぞれ 「1分」が目安 です。
漢字は、分からないときは考えても出てこないことが多いです。
また配点も各2点だけ。
ここで悩んでいても時間を無駄にするだけです。
10秒考えてわからなかったら飛ばしましょう。
漢字の書きよりも正答率が高い問題(=簡単な問題)はかなり多い
大問2(漢字の書き)で最も低い正答率(最も答えにくい問題)と読解問題の正答率とを比べてみます。
すると、 難しい漢字の問題よりも正答率の高い読解問題がかなり多い ことが分かります。
思い出せるかどうかだけで決まる2点の漢字問題に3分間悩むぐらいだったら、
しっかり考えれば解ける5点の読解問題2問に時間を使った方がよくないですか?
ポイント④:【時間】大問3、大問5、大問4の読解問題は「13-13-15分」
都立入試の国語の読解問題は文章が3つ。 時間配分の目安は「13-13-15」 です。
- 大問3:13分
- 大問5:13分
- 大問4:15分(作文除く)
さらに「文章を読む時間」と「問題を解く時間」にわけると、時間の目安は以下のようになります。
なお、大問3は「最初に書かれている場面設定」も必ず読むようにしてください。
細かい理解度よりも、速度をとる。
「文章読むのに4分って短くない?」
と思われるかもしれませんが、 逆に4分以上かかっていたら、読み方が間違っている可能性が高い です。
ー「読むのが遅い」生徒にありがちなカンチガイー
- 言葉は全て知っていないといけない(言葉の意味を思い出そうと考え込んでしまう)
- 1文ずつ全て理解しないといけない(何度も同じ文を読みかえしてしまう)
- 内容を覚えていないといけない(前に戻って、既に読んだ部分をまた読んでしまう)
「じゃあどうしたらいいの?」 と思ったら、以下を試してみてください。
ー「読むのが遅い」場合の対処法ー
- 知らない言葉が出てきたら、考え込まないで、話の流れから推測する。もしくは飛ばす。
- わからないところがあっても読み進め、まずは話の大まかな流れをつかむ。
- 問題を解くときに、線の引かれた部分の周りをもう一度読み直す。
文章の全体を完璧に理解していなくても、 線の引かれている前後のみを把握すれば解けるという問題も多い です。
最初に文章を読む際は「理解度よりも速度をとる」ということを意識しましょう。
ポイント⑤:【時間】作文は「5分」!
最後に作文の時間配分についてですが、
「目標5分、長くても8分」
が目安となります。
作文は最後に取り組むことになります。
そこで「少なくとも何分残しておくべきか?」で言うと、
「最低4分」
です。
それ以上短いと、部分点がもらえるような作文を書くことが非常に難しくなります。
「目標5分、長くても8分」としつつ、 他の問題に時間がかかっても、最低4分は作文にあてる ようにしましょう。
「どうやって5分で作文を仕上げるか?」はまた別の記事で詳しく紹介しますが、ポイントは「型に沿って書くこと」です。
少しだけ紹介すると、
- 「2段落」で書くと決めておく
- 1段落目:作者の考え+自分の意見と理由
- 2段落目:自分の体験+まとめ
- 「ですます」(敬体)で書く(「発表する言葉」という条件が多いため)
といったことです。
これに沿って書くと、以下のようになります。
【1段落目】
(作者の考え)筆者は、自立分散的に状況に対応する組織を理想としています。
(意見と理由)私は、個々が周囲と協力し補い合い、自分で考え行動できる組織が理想と考えます。
【2段落目】
(自分の体験)私が所属する生活委員会では、三年生を中心としたグループを作って、役割を分担しています。月ごとに相談しながら、挨拶運動や下校点検など、そのときに必要な活動ができるよう、柔軟に分担や編成を決めています。
(まとめ)私も自ら行動できる生活委員になれるよう努力していこうと思います。
時間が残ったら?
まずは漢字を見直す ようにしましょう!
大問3・4・5の読解問題については、「絶対にミスだ!」とわかった時以外は、最初に選んだ答えは変えない ようにした方がいいです。
経験則ではありますが、戻ってきた時には文章の内容も少し忘れつつあることもあり、悩んでいる問題については答えを書き換えると、間違ってしまうことの方が多いです。
都立入試の国語 解く順番・時間配分とポイントおさらい
①【順番】大問4の前に大問5を先にやる!
大問5の方が読みやすい。また簡単な問題がひそんでいることが多い。
大問4の作文を試験の一番最後に持ってくることで時間のかけすぎを防ぐ。
②【順番】大問4はまず作文の問題を見る!
作文のテーマが、大問4の文章の一番大事なことを表している。
また、「作文で何を書くのか」を意識しながら文章を読むこと。
③【時間】大問1、大問2(漢字)はそれぞれ「1分」!
10秒考えて思い出せなかったら飛ばす。最後に時間が余ったら戻ってくる。
④【時間】大問3、大問5、大問4(読解)は「13-13-15分」!
細かい理解度よりも速度を重視。大問3は「前置き」、大問4は「作文のテーマ」をはじめに読むこと。
⑤【時間】作文は「5分」!
最低4分、目標5分、長くて8分。型に沿って書く。
時間配分を意識した練習を!
国語は正答率がばらつき、簡単な問題と難しい問題の判別がなかなか出来ない科目。
そのため 「まず全問解く」を最優先 に。
タイマーで時間を設定しながら過去問を解くことで、試験当日の時間配分のイメージがつきやすくなります。
はじめは「全然時間通りに解けないよ〜!」と思うかもしれませんが、意識をして練習していくと目安の時間以内に解けるようになってきます。
焦りは禁物。時間がなくなってしまうと焦ってしまい、落ち着けば必ず解ける問題もまちがえやすくなります。
落ち着いて試験に向かえるよう、時間を意識して解く練習を重ねておきましょう!